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はたおり機の音が響く雨の小浜島

織物文化が息づく島

雨の小浜集落は普段の穏やかさを保ちつつ、しっとりとした衣をまとったような不思議な雰囲気に包まれています。集落を歩く人も少なく、いつもは自転車で島をまわっている観光客の人の姿も見えません。しかしその静かさがかえって心地よく、体の芯が休まるのがわかります。
竹富町では各島々で独特のまつりや文化が根付いていますが、小浜島の人がもっとも大切にしているのが着物の文化です。
小浜島に織物文化があることはあまり知られていませんが、小浜島の織物は産業としてでなく暮らしの中に息づいています。小浜島の織物、着物文化について小浜民俗資料館館長の慶田盛英子(けだもりひでこ)さんにお話を伺いました。

着物とともに暮らす

小浜島にはお盆、結願祭、種子取祭という3つの大きなお祭りがあります。これらの祭りでは、必ず着物を着用しなければならないそうです。また祭事だけでなく冠婚葬祭においても小浜島の人は着物を着る習慣があるといいます。他の島では途絶えてしまった着物文化も、小浜島では伝統や習慣から残ったのではないかと慶田盛さんはおっしゃいます。
もうひとつ興味深いのは島の人が着る着物は、島の人自らが織っているということです。年間行事のために着物は1人6枚ほど必要で、多くの着物は家族のために、女性が機を織って作るそうです。小浜島の着物は島外へ売るためではなく、島の伝統を受け継ぐために存在するのです。
「この島には特別なものはないけれど、着物だけはとても贅沢に自分たちで織って着ている。それがとても誇らしい」そう慶田盛さんは目を細めます。
各家庭にははたおり機があり、農作業のない雨の日はそれぞれの家で機を織るのだとか。雨の日の小浜島は、島のために家族のために女性が一反一反思いを込めて機を織る音が優しく島を包むのです。